ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。




すると、また引き寄せられて、石鹸の匂いに包まれると。

はあっと首筋に顔を埋めて、どこか責め立てるように言ってきた。



「なに騙されてんだよ。ばか」


「ちょっ、千隼くんだってっ、…バカじゃないけど、でもっ」


「ふっ、…俺もバカだよ」



抱きしめ返して、また返されて。

思っていたことを隠さず言って、くすっと困ったように笑いあう。



「バカな千隼くんも大好きだよ…!」


「…俺も」


「バカな私のこと、だいすき…?」


「───…だいすき」



言葉は、大切だ。
私たちには大切なんだ。

言葉しか……ないんだ。

こうして向き合って伝えあえる今、かけがえのない時間はここにある。



「私ね、ポエムっちゃった」


「……ポエムっちゃったってなに」


「ポエム書いたってこと。千隼くんも書いた?」


「…いや、俺はポエムはさすがに」


「えっ、私だけ…!?てっきりポエムってくれてると思ってたのに…!ひどいよ千隼くん!」


「なんでそのワード使いこなしてるの」



ふたりだけの世界で。

もう2度と離れないように、離さないように、私たちはぎゅっと手を繋いだ。



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