ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。




前を歩く高校生。

腕を絡ませて甘えた声を出す女の子と、軽くあしらっている男の子。



「俺だって一緒にいたいけど…もし赤点取ったら補習になって、もっと一緒に居られなくなるよ」


「それも嫌っ!あっ、じゃあ電話!電話ならいい?」


「うん。寝る前にかけるよ」



制服を着て歩く帰り道。
手を繋いで、“まだ帰りたくない”と言って。

学生というキラキラした期間は、人生のなかでも特別なものだ。


私にもそんな時代があった。



「───…ちはやくん」



あの頃、私たちはまだ高校生だったね。


大人とも言えない君は、大人ですら抱えきれない大きなものをいつも背負って。

責めることも、恨むことも、憎むこともしないで受け入れて。



『もし、病気が治ったら……どうする…?』



やっぱりね、今でも思うんだ。
ほんっとうに私は馬鹿だったって。

傷つけてばかり、最低な質問ばかりをしていた。



『なにも変わらない。今と同じでいいんだ』



だとしても、後悔など微塵も見せない顔をして言ってしまうのが君だった。


それが、

私が人生でいちばんの恋をした男の子───。



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