ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。




ここまでたくさんの技術が開発されている時代なのに、彼の病気は治せないなんて……そんなのおかしすぎる。



「目の前にある病気を治せないで…、なにが医者なの…っ、どこが医者なの……っ!!」



治せないなら医者と名乗る資格なんかない。

彼の病気を的確に説明できないのなら、主治医なんか辞めてしまえ。

立派に着た白衣だって聴診器だって、ぜんぶ意味のないお飾りにしかなっていない。



「治せもしない治療費に大金をつぎ込ませるばっかりで…っ、そんなの詐欺師と何が違うっていうの……っ!!!」



そんなことを言ったって仕方がないのに。


ただ私は、責めて、責めて。

ずっと胸に秘めていた不安をぶつけるように八つ当たりしては、叔父である男をどうしようもないほどに責めつづけた。



「───…コレラ……」



何かを言われたと、私はぐしゃぐしゃな顔を上げた。

彼の目に同じように涙は溜まっていなかったが、私と変わらず泣いているようにも見えて。



「聞いたことあるだろう、日本では江戸時代に流行った感染病だ。
今の時代ではワクチンや抗生物質によって治療することができるし、俺も実際の患者は見たことがないくらい、日本の感染者は少ない」



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