甘くてこまる

「???」



𓐍
𓏸




「あ、起きた」



重い瞼を、頑張って持ち上げる。

寝起きのぼやぼやした視界に、薄茶の髪が入りこんでくる。




「おはよ、せーら」

「おはよう……」





今日も今日とて。



目が覚めて、いちばんに、郁と顔を合わせる。

郁が部屋にいる朝にも、だんだん慣れてきてしまった。




明日からは来ないで、起こしに来てくれなくたっていいよ、って何度も断ったけれど

「今まで、せーらが起こしにきてくれてたじゃん。そのお返しだと思ってよ」

と言いくるめられて。




わたしだって、本当言うと……郁がいる朝はいやじゃないから、突っぱねるのを、あきらめてしまったの。




でも、ときおり、ひやっとする。



郁が毎朝、わたしのことを起こしに来ているなんて、郁のファンの女の子たちが知ったらどう思うかなって、想像してしまうと。





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