甘くてこまる
「???」
♡
𓐍
𓏸
「あ、起きた」
重い瞼を、頑張って持ち上げる。
寝起きのぼやぼやした視界に、薄茶の髪が入りこんでくる。
「おはよ、せーら」
「おはよう……」
今日も今日とて。
目が覚めて、いちばんに、郁と顔を合わせる。
郁が部屋にいる朝にも、だんだん慣れてきてしまった。
明日からは来ないで、起こしに来てくれなくたっていいよ、って何度も断ったけれど
「今まで、せーらが起こしにきてくれてたじゃん。そのお返しだと思ってよ」
と言いくるめられて。
わたしだって、本当言うと……郁がいる朝はいやじゃないから、突っぱねるのを、あきらめてしまったの。
でも、ときおり、ひやっとする。
郁が毎朝、わたしのことを起こしに来ているなんて、郁のファンの女の子たちが知ったらどう思うかなって、想像してしまうと。