死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる
「ここにいる間、殿下はオルヴィシアラの王子として、国家の人間として見られている。すなわち、殿下次第で国の印象はいかようにも変わるということを忘れないでほしい」
リアンのことを知らない人たちにとっては、一国家の王族として映る。だからここでは──帝国にいる間は、隣国の王族として振る舞うべきだとローレンスはリアンの背中を押した。上に立つ者として、やがて人々を導く存在として。
「…はい。以後気をつけます。ありがとうございます」
うむ、とローレンスは返すと、帝国の伝統衣装がよく似合うリアンを今一度眺めた。ルヴェルグと同じ金髪のリアンは、赤い色が本当によく似合っていた。きっと帝国の偉人たちが身に纏っていた禁色──紫色も映えることだろう。
(殿下が、ディアの夫となられたら…)
ふいに、いつかクローディアの隣に立つであろう伴侶が、目の前にいるリアンだったらどんなに良いかとローレンスは想像した。
銀色の髪と菫色の瞳の皇女と、金髪碧眼の王子。類稀なる美貌を持つ二人が手を取り合ったら、どんなに素敵だろうか。
帝国の皇族だけが身に纏うことを許されている紫色の衣装を着ているリアンの姿を想像していたローレンスは、目の前で不思議そうな顔をしているリアンを見て小さく微笑んだ。
「そうだ、ディアは今日水色のドレスを着ていたから、殿下もそれに合わせるとしよう」
「合わせるとは?」
「殿下、パートナーとして女性をエスコートする時は、揃いの衣装で行くものなのだよ」
それはローレンスだけなのでは、とリアンは思ったが、建国千年祭の式典でこの兄妹たちがお揃いを着ていたことを思い出した。