死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる
「あれからか。傷が良くなってきてから、ディアのお兄さん達…陛下や殿下方がよく訪ねてきてくれたよ。楽しい話をたくさん聞かせてくれた」
リアンは苦い記憶に蓋をした後、クローディアに近況を話していった。
参加を辞退した晩餐会の翌日、皇帝ルヴェルグが見舞ってくれたこと。エレノスが優しい味のする綺麗なお菓子を持ってきてくれたこと。
二日に一度の頻度でローレンスが会いに来ては、部屋の外に連れ出してくれたこと。
クローディアの幼少期の微笑ましい話も聞いたが、それは言わずにリアンは微笑みを浮かべた。
「ディアは愛されてるんだね。皆ディアのことばかり話してた」
自分とはまるで違う、とリアンは思った。生まれた時は誰もが祝福し、たくさんの人に愛されて育ったのだろうと思ったが、口にはしなかった。ないものねだりをしたところでしょうがないのだ。リアンとクローディアは別々の人間なのだから。
リアンの淋しげな微笑みを見つめていたクローディアは、躊躇いがちに口を開いた。
「…リアンは、不仲なのよね? お兄様と…」
「まあそうだね。不仲なんて表現は優しすぎるくらい」
優しい家族に愛され、大切に育てられたクローディアには、自分とは正反対の境遇で育ったリアンの家庭環境というものが想像できなかった。
リアンにとって、家族とはどのようなものなのだろうか。知りたいと思いつつも、訊いていいものなのかと迷っているクローディアを見ていたリアンは、クローディアの膝の上にある扇を手に取り、指先で弄んだ。