死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる
ヴァレリアンの生い立ちは人伝に聞いていた。神を冒涜する存在だと疎まれ、嫌われ、生まれた時は殺してしまうべきだと言われたことも。それを止めたのが、フェルナンドだということも。
(…辛い目に遭ってきた人が、人を不幸にするだろうか?)
ふと、エレノスの頭にある疑問が浮かぶ。
それは、なぜクローディアがヴァレリアンに殺されたのかだ。
「…なぜディアを? その時ディアはどこで何をしていたのですか?」
「皇女殿下は……私の妻だったのです」
ぽろぽろと、フェルナンドの瞳から涙がこぼれ落ちていく。それは降り出した雨のようで、止めどなくあふれていた。
「ですが私は、私に嫁いできたがためにヴァレリアンに葬られた彼女を不幸にしたくなかったので、今回は諦めたのです」
「…………」
エレノスは目を伏せ、何も答えなかった。
そもそもその話が信じられないのだ。そんな悪夢のような話を、しかも他人から聞かされて、それは辛かったですねと飲み込むことはできない。
そんなエレノスを見かねたのか、フェルナンドは勢いよく立ち上がると、ダンッと叩くようにテーブルに手をついた。
「お願いです、エレノス閣下。あの二人を離してください。悪魔の子であるヴァレリアンと共にいては、皇女殿下は不幸になってしまいますっ…!!」
「……信じられません。あの殿下がそのようなことをするなど」
「信じろとは言いません! ですが、私は彼女のことなら何でも知っております!クローディアを愛しているのです!!」