死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる
さらさらと、銀糸のような髪が靡いている。春景色に埋もれるように其処にいた女性は、大きなお腹を撫でながら、囁きのような声で唄を口遊んでいた。
──『つきよ ひだまりよ ゆめをみるこに ひかりのなを─…』
その歌は、エレノスにとって子守唄だった。高位貴族の生まれだというのに、皇帝の妃だというのに、自分の手で子を育てると言って聞かなかったその女性の名は、ルキウス一世の妃であった皇妃ソフィア。エレノスとクローディアの母親だ。
(──…母上)
母の夢を見るのはいつぶりだろうか。暖かく柔らかい何かに包まれ、底へ底へと引き摺り込まれるような心地がしていたエレノスは、こちらにいらっしゃいと手招いてくる母の夢から醒められずにいた。
──『さあ、エレ。もうじき父上もいらっしゃるわ。こちらにいらっしゃい』
ちちうえ、とエレノスの唇が動く。母は他の妃とは違い、父とは深い愛情で結ばれていた。そんな妃との間に生まれた子供だからか、エレノスは父に特別目をかけてもらえていた記憶がある。
母の生家の血筋の特徴である、美しい銀色の髪。皇族の証である紫色の瞳を持って生まれたエレノスは、絶世の美女にも引けを取らないほどに美しいと謳われた父・ルキウスに顔立ちがよく似ていた。
公爵家の生まれの寵妃が産んだ、美しい皇子。皇位は当然エレノスが継ぐのだと誰もが思っていた。
──そう、クローディアが生まれたあの日までは。