死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる
「ええ? だって、ジェラール公の跡取りはまだ幼いし、サマンサ侯爵の御子息たちは危ないし…。帝国内の貴族で皇女と釣り合う家はオルシェくらいだったからね」
ベルンハルトは自分が一番の夫候補だったのだと語ると、クローディアをローレンスの元へとリードした。パートナー交代の時間だ。
クローディアは頭に挿してある花を一輪抜くと、ベルンハルトの胸ポケットに挿し入れた。
「ふふ、そんな未来もあったのかもしれないわね」
ベルンハルトの左胸に紫色の薔薇が咲いた。国の象徴でもあり、国旗にも描かれているサイレントローズという花だ。
──もしもあの時、フェルナンドに助けられていなかったら。そのまま時を重ね、いつか二人は結ばれていたのかもしれない。
「どうかしたのかね? ディア」
力強く身体を引かれたクローディアは、二人目のパートナーとなった兄・ローレンスを見上げて微笑んだ。
「いいえ。ベルの背が伸びていたから、少し驚いてしまって」
ついこの前まで目線の高さは同じだったわ、とクローディアは懐かしむように言う。
「ははっ、何を言うのかね。公子は男だ。これからうんと伸びて、ディアのことなど見下ろしてしまうよ」
僕のようにね、とローレンスはクローディアの耳元で囁くと、くるくるとクローディアの身体を回した。
急なターンにクローディアは驚いたが、こんな風に踊れる相手はローレンスだけだったから、この際楽しんでしまおうと思い控えめに燥ぐ。