死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる
「もうっ、ローレンス兄様ったら。いつも音楽に逆らうんだからっ…」
「いやぁ、僕は決められた道の上を歩くのが大嫌いでね」
古くから続く慣習や定めなど、こうあるべきだとされているものが嫌いなローレンスは、いつだって自分に正直に生きている。
道は自分で決めるのだとローレンスは語ると、クローディアを横抱きにして回りながら、銀髪の皇子の元へと連れていった。
「ローレンス兄様っ…目が回っ…」
目を回したクローディアだったが、柔い温度に抱き止められた。
「…大丈夫かい? ディア」
視界いっぱいに映るのは、この世の誰よりも自分のことを愛してくれた大好きな兄・エレノスだ。
クローディアと同じくオルシェ公爵夫妻から贈られた衣装を着ているエレノスは、今日は一段と煌びやかで素敵だった。
「…お兄様」
クローディアは無性に泣きたくなった。
嫁ぐということは、エレノスと離れ離れになるということ。いつだって自分を守ってくれたこの人から離れ、別の人の手を取り、今度は家族を守る立場にならなければならないのだ。
生まれた日に母を亡くしたクローディアにとって、エレノスは親代わりでもあった。寂しげに微笑むエレノスを前にしたら、胸が痛くて堪らない。
今にも涙をこぼしそうなクローディアの頬に、エレノスはそっとキスをすると、愛する妹の手を取った。