死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる
「…ゴホッ、リ、リアンッ……」
「ディア、もう少しだけ頑張ってっ…!」
唯一の希望であったテラスは、まだ火が回っていなかった。だがその下の川は、今朝方まで降っていた強い雨の影響か、水が増し荒れている。
リアンはクローディアの息が絶え絶えなのを見て、迷っている暇はないと思った。
「……ごめん、ディア」
「リ…リアン……?」
リアンはクローディアのドレスを脱がすと、自分も上の服を脱いだ。泳ぐのに邪魔になるからだ。
クローディアは煙のせいで目を白黒させる間もない。一刻も早くここから離れなければ。意を決したリアンは、クローディアの脇と膝裏に腕を入れ、横向きに抱き上げた。
「ごめん、急に乱暴なことをして」
「…リ、アン……」
「ここを出て、もう一度ディアに触れることができたら……伝えたいことがある」
──聞いてくれる? と、リアンはクローディアに笑いかける。クローディアも笑った。とても嬉しそうに。
その笑顔を胸に、傍にいると約束をした人を腕に抱きながら、リアンは勢いよくテラスから飛び降りると、荒れ狂う川へと向かって落ちていった。
二人が落ちた衝撃で、大きな水飛沫が上がる。すぐさま水面から顔を出したリアンは、苦しそうにしているクローディアを抱きながら、懸命に泳いだ。
「ディア、絶対に目を閉じないでっ…!!」
冬の水の中は肌に刺さるように痛かったが、リアンはクローディアを連れて必死に泳いだ。