死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる

「──このままでは、クローディアが殺されてしまう。だから私は、兄上に皇位を退いていただこうと思ってね」

「なッ──‼︎」

「ふふ、意外かい? 私が皇帝になろうとしているのは」

「当たり前だ! 皇位簒奪を目論むなどっ…兄上らしくもない!!」

戸惑いに揺れるローレンスの瞳を絡め取るように、エレノスが間近で顔を覗き込む。

「らしくない、とは? 君は私という人間を、どこまで知っているんだい?」

いつも通りの美しい笑顔で。優しい声音で、エレノスは言う。

「あ、兄上は……いつも優しくて、家族想いで、努力家で、何でも出来てしまう素晴らしい方で…」

「………だから?」

「だから、兄上は家族を……クローディアを悲しませるようなことは、絶対にしないだろう?」

縋るように、祈るようにローレンスは声を絞り出したが、エレノスは何も言わなかった。静かな眼差しでローレンスを一瞥すると、背を向けたまま口を開く。

「かつて私たちの父は、私にこう言った。皇帝という座は、何かを成し得る為の手段だと。守りたいものは両手以上にあるか、と」

「……それで、兄上は?」

「ないと言ったよ。私の大切なものは、ずっと、ひとつだけだったから」

エレノスはそう冷たく言い放つと、静かに部屋を出て行った。無論鍵をかけて。
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