【完結】借金返済のために結婚したのに、いつの間にか愛で包まれていました。
「待たせて悪いな。ちょっと道が混んでて」
「いやいや、平気だって。気にすんな」
そんな会話を横で聞いていると、悠一さんは私に向かって「君が花純ちゃん? 初めまして、金沢(かなさわ)悠一です」と自己紹介をしてくる。
「初めまして、本郷花純です。よろしくお願いします」
自己紹介をし返すと、悠一さんは「花純ちゃん、泰裕の言うとおり、可愛らしい人だね」と言ってくれる。
「そ、そうですか……?」
「うん。こんな可愛い人が奥さんだなんて、羨ましいよね、お前」
泰裕さんに向かってそう言っている悠一さんだけど、泰裕さんは悠一さんを冷たくあしらっている。
「お前も早く嫁、捕まえろよ」
「うわ、嫌味か!」
「ふん」
なんか……いつもの泰裕さんじゃない。なんていうか、泰裕さんとても楽しそうに見える。
私には普段見せないような、そんな表情をしている。 私にはそんな表情……今まで見せてくれたことはないのに。
「場所取ってあるから、行こうか」
「ああ。 行くぞ、花純」
「はい」
悠一さんには本当に心を開ける存在なんだ、きっと。泰裕さんにとって私は、心を開ける存在じゃない。
私には、そう思えてしまった。