俺様御曹司はドン底OLを娶り愛でる~契約結婚だと思っていたのは私だけですか?~
旭さんからの提案を呑んでから一か月が過ぎようとしていた。

こんなからかいはよくあることで、その度に私はハラハラとさせられる。

あれからすぐに互いの両親に挨拶に行き、役所に結婚届を出し私たちは戸籍上、夫婦となった。旭さんのご両親も私の母も弟も、とても喜んでくれてその反応を見ていると、騙しているみたいで心が痛んだ。

でも、まさか本当のことは口が裂けても言えない。

旭さんは約束どおり借金を肩代わりしてくれて、母も弟も今は穏やかな生活を送っている。いろんな手続きのため会社の人事の一部の人は私たちの結婚を知っている。

だが、口外をしないようにと旭さんが釘を打っていて、頃合いを見て会社でも公表することになっている。それは私の立場を考えてくれてのことだと思う。

そもそも私たちの関係はいつ終わるかとも分からない契約結婚なのだ。このまま公にせずにひっそりと離婚することもありえるのかもしれないと、頭の片隅にはそんな思いもある。

結婚して変わったことは旭さんのマンションで同居生活を始めたことと、家で私が彼のことを『旭さん』と呼ぶようになったこと。

最初の頃、家でも『瀬名課長』と呼んでいたらそれを彼から幾度となく注意されて、旭さんと呼ぶようになった。

彼は俺様だから亭主関白だと思っていたが、意外に家事を手伝ってくれるし私にあれこれと要求してこない。

ご飯を作るのも私自身が勝手にやっていることだ。いろいろ工面してもらっているからこそ、妻としてできる限りは努めていきたいと思っている。

寝室は別だからプライベートをそれなり確保できるし、この生活に大方不満はないが、さっきみたいなスキンシップがあるとどうしても動揺してしまう。

まぁ、旭さんからしたら私をからかって私の反応を見て楽しんでいるだけなのだろう。
< 44 / 150 >

この作品をシェア

pagetop