月夏の魔法

だから文献を読みあさり朝から晩まで、飛べる魔女になるため、箒に乗る練習に明け暮れた。


 魔女になるためなら、どんな努力だって、苦労だってするの。バカにされたって負けたりしない。――飛べる魔女になったら、郵便屋さんになるんだから。



 あの日アカデミーで、泣いているわたしを見つけてくれたのは魔法使いのお兄さんだった。見てみぬふりだってできたはずなのに、自動手記の魔法で手紙まで書いてくれたのだから驚きだ。


「知ってる? アカデミーの先にある森を抜けた先に――ひまわり畑があるんだ。そこには言い伝えがあってね」


 シフォンケーキのようにやわらかな笑顔と渡された手紙。あたたかくて、まぶしくて。

 何度読んだかわからない手紙。そこに描かれていた未来への約束のため、もしかしたらそれはお兄さんのやさしさかもしれないけど。


それでもわたしは、飛びたいんだ。
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