RED&BLACK
「シェラ!庭のベンチに鳥のフンが落ちているじゃないの!ちゃんと掃除をしろとあれほど言ったはずよ!?」

荒れた肌に低い鼻、ボッテリとした灰色の目をした美しいとは言い難い容姿をした女性は目を釣り上げながら怒り、シェラの頰を強く叩く。小さなシェラの体は呆気なく床に倒れ、痛みと恐怖から涙が溢れていく。

「奥様、ベンチの掃除は私がいたします!」

シェラよりもずっと綺麗なメイド服を着た使用人が横から声をかけるも、女性ーーーナターリア・ボーデンは使用人を睨み付け「黙りなさい」と言った。使用人はその一言で黙ってしまい、シェラに再度手が振り下ろされる。

バチンと乾いた音が響いた。ナターリアはサファイアのついた指輪をはめていた。指輪をはめている方の手で今度は叩かれたため、シェラの頬に傷ができてしまう。

「お母様、痛い!やめてください!」

血が滲み、シェラは泣き叫んだ。するとナターリアに「泣くんじゃない!」と怒鳴られる。

「泣く暇があるならベンチの掃除をしなさい!」
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