一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】
「チェックインしたら下見に行ってくるから、部屋で休んでて」

「何か手伝えます?」

「特にないし、休んでて。後で、昼食に行こう」

「……ごめんなさい」

仕事なのに、体調を……気持ちをちゃんとコントロール出来ていない。
家の事から何から、すべてクロエさんがやってくれているのに、自分の管理すら出来ないなんて。

茉莉香からのメッセージなんて、何の言い訳にもならない。
仕事する以上は、ベストな状態でいなきゃいけないのに。

どうして、たった一通のメッセージでグラグラしてしまうんだろう。
いつか起こるとわかっていた事じゃないか。

「精神的に……不安定だって理解っていて、そこに付け込んでした様な契約だから」

「え……?」

「だから、謝らないで」

「でも……」

「いいの」


また、これだ。

クロエさんの短い言葉だったり、抱き締めるといった行動だったり。
そういうものに触れる度、自分の奥の方にある何かが小さく動く。

正体のわからないそれは、自分を乱す様な、正す様な、おかしなもの。
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