一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】
検索結果を見ると、この前と同様にクロエさん自身の顔写真や経歴、そして賞を受けたクロエさんの写真が出てきて、初めてクロエさんの写真を見た。


ああ、良いな。
こんな写真を撮ることが出来るんだ。
クロエさんの眼には、こう映っているんだ。


一番にそう思った。



昔から自分は美術館へ行くことは好きだけど、どんなに好きだと思った絵でも、何が良いだとか、どう感じたのかを言葉で説明出来ない。
語彙力の問題なのかと思い、読書するように意識したり、学校ではプレゼンする事もあって良い機会になった。
それでも、あまり改善されていない。
クロエさんの写真も好きだと思ったけれど、うまく説明出来ない。

講評を見ると、写真家やアーティスト、プロデューサーや編集長といった肩書きの人たちが、きちんとした言葉でクロエさんに賛辞を送っている。
人が言葉にしたものを読むと、自分もそう言いたかったのだと頷けるのに、どうして自分では言葉に出来ないんだろう。

クラスメイトが憧れていると言っていた、世界的にも有名だというアーティストとクロエさんが肩を並べている画像もあった。



本当に、自分が被写体で良いんだろうか。



ウィンドウのバツ印をクリックしても、しばらく不安は消えなかった。
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