if...運命の恋~エリート循環器医は彼女を手放せない~
今日、大澤学長が退院をした。入院後3か月が過ぎた頃だった。
明日からは暫くリハビリを兼ねての出勤になるようだ。
退院のお祝いの花束を看護師達が持って学長に渡すと学長が照れながら ”ありがとう”って受け取った
そして、僕に振り返りながら言った。
「片瀬先生、君はいつ頃に米国に発つのかな?」
『・・先生が退院されたので、すぐにでもと思っています』
「ゆっくり話がしたいんだが、君が落ち着いてから我が家に来て欲しい」
『・・・はい、わかりました』
学長のその回復力は目を見張るものががあり、ほぼ後遺症も残らずに退院できて良かった。坂上教授がいなくなった循環器内科にも配慮してくれたおかげで、病院内の混乱も落ち着いた。
学長が車に乗ると傍にいた奥様が僕に会釈してきた。
「片瀬先生、本当にお世話になりました。本当に感謝しております、、きっと薫さんも」
『いえ、学長の生命力の強さです』
薫の名前をだした奥様の言葉を遮った。僕はそんなに強くない。
薫が姿を消した日から数日は、仕事が終ると毎日彼女の行きそうな場所を探しまわった。殆どの夜を薫の帰ってこないマンションの前で待った。
いつのまにか、僕は笑顔させつくる事を忘れてしまっていたし、仕事だって手につかないほど弱っていた。
ある日、それは明らかにされた。
薫からの被害届で、実行犯の大月に強姦罪に脅迫罪、坂上教授が暴行教唆罪とされ告発された。大学病院のスキャンダルは早急な逮捕劇へと発展した。
性犯罪であるため、院内ではかなり噂に上ったが、皆が僕に気をつかって薫の話をしなくなった。
ただ、”僕が落ち着く? いや、薫が僕の前から姿を消して
この数ヶ月、一時も落ち着くだなんて事はなかった。