if...運命の恋~エリート循環器医は彼女を手放せない~
モニターのピッピッという音が、リズムを乱すことなく響いている病室で、
少しだけ呼吸のしっかりしてきた優人を前に、薫が手を握って離さない。
僕は病室から廊下に出て、ラウンジにあるジュース販売機の前に立った。母さんがラウンジのソファに腰かけていたが、僕をみつけると困ったように微笑んでいる。
ホットコーヒーを買うと母さんに渡した。
「ありがとう、、俊ちゃん」
『うん、、子供はもう大丈夫だよ』
「そう、、、良かった」
子供はあの後、息を吹き返し心臓も正常に戻った。ショックの後で、浮腫は少し残ったものの、顔面の紅潮と全身の蕁麻疹は、対処する薬を使ったから数時間もすれば軽快していくだろう。
自分の手で子供を助けられた事は本当に幸運だった。救急の医師や小児科専門の医師が他を対応していたという不幸が重なったけれど、僕は循環器の医師で、アレルギーに関しては素人みたいなモノだから、そうとしか言えない。
緊急時の対応は状況を判断して冷静に対処するっていうのが鉄則だし、薬液量さえ間違わなければ治療法はそんなに大差ないから良かった。
廊下を足早に歩く足音が大きくなり、目の前を白衣を着た医師が僕の前を通った。
”あの男は、、ああ、薫と一緒にいた”
薫の夫だと思った。緊急事態を聞いて駆けつけたのか?
薫のいる病室にノックもせずに入る姿をみつけて、僕はその後を追いかけ病室に入る事にした。