御曹司の溺愛から逃げられません
「課長、すみません。田原様とおっしゃられる女性が課長を呼んでいらっしゃるのですが……」

バックヤードのデスクにいた課長は声をかけると頭を上げた。

「田原様?」

「はい。30歳くらいの女性です。ご存知ですか? 用件はお伺いできてないのですが」

課長は思案顔だが思い当たらない様子。
ひとまずお待たせしたままには出来ず、課長は立ち上がり店頭へと歩き出した。私は課長の後をついていく。

「大変お待たせいたしました。阿部です」

「あなたが阿部さん? 三上さんから聞いた通り、いい男ね」

女性は先ほどとは打って変わって微笑みながら阿部さんを見つめる。

「本日はどう言ったご用件でしょうか?」

「三上さんから阿部さんの評判をお聞きしてお部屋を紹介して欲しいの」

課長は微笑んだままだがなぜか着席しない。

「三上様からのご紹介でしたか。ありがとうございます」

丁寧に頭を下げお礼を言うがその後に続いた言葉に驚いた。

「せっかくですが私は上で管理しているものですので物件の紹介はこの柴山が担当させていただければと思います。彼女は女性向けの物件をお探しするのに評判がいいんです。では、失礼致します。三上様にもよろしくお伝えください」

また丁寧に頭を下げ、課長はバックヤードへ戻ってしまった。
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