目の前の幸せから逃げないで

鈴香の 予想に反して 光毅は 真面目に 仕事をしていた。

2週間もすると 鈴香から 引き継いだ仕事は 任せられるようになっていた。


「ハタ君、すごいじゃない。もう、いつ産まれても 安心だわ。」

鈴香が 光毅の様子を 見ながら 褒めると

「そんなことないです。」

と、光毅は はにかんだ笑顔になった。


人見知りと 言っていた光毅も

私達には だいぶ 打ち解けていた。


仕事の合間に 世間話しをして 笑うようになった。


「ハタ君、彼女いるの?」

鈴香に 聞かれ

「いませんよ。」

と答える 光毅。


「えーっ。ハタ君、モテるでしょう?イケメンだから。」

「モテないです。イケメンじゃないし。」

と光毅は 顔を赤くして 否定していた。


「じゃ、休みの日とか 何しているの?」

「特に何も。パソコンとか、映画見たり。ほとんど 家にいます。」

「そうなの?友達と 出かけたり しないの?」

「はい。僕、友達も いないから。青木さんは 何しているんですか?休みの日…」

「私は、ほとんど 出かけているわ。一日中、家にいたら 頭痛くなっちゃうもの。」

「えーっ。それ、家に 何かの霊とか いるんじゃないですか?」


鈴香と光毅の 会話を聞きながら、私は クスクス笑っていた。

私の 笑い声に 気付いた光毅は

「三島さんも、休日は 出かけるんですか?」

と私に 話題を振る。


「ううん。私は 家にいるわよ。」

「由紀乃も インドア派だよね。」

鈴香が 頷きながら言うと、光毅は ホッとした笑顔になる。


「だいたい、そんなに 行く所 ないじゃない。」

「用はなくても、外に出れば いいのよ。街をブラブラして、おしゃれなカフェで 休んで。」


「ダメダメ。私、人混み 苦手だから。それこそ、頭痛くなっちゃうわ。」

「僕もです。買い物も、買う物決めて サーッと済ませて。」

光毅の言葉に 私が ウンウンと頷くと


「ハハッ。二人、合うんじゃない?」

と、鈴香に 茶化された。








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