目の前の幸せから逃げないで
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「由紀乃、2時から面接 大丈夫?」

鈴香は 事務所に入って来ると

パソコンに向かっている私に声をかけた。


「2時でしょう?あと30分あるから大丈夫よ。キリの良い所で止めるから。」

パソコン越しに 鈴香を見る私。


「だからさぁ。着替えとか 仕度してよ。」

鈴香は やれやれという顔をした。

「はぁ?何で私が仕度するのよ。面接される方じゃないのよ。」

「由紀乃、その服で 面接するつもり?」

「えっ?変かしら。」

「スーツくらい 着てよ。一応、社長なんだから。」


鈴香は『その服』って言ったけど。

私は別に 変な恰好を しているつもりはなかった。


「これでいいじゃない。面接って言っても バイトよ。」

「だからこそ、スーツ着て 箔をつけておくんじゃない。今の大学生なんて ちゃっかりしているから。舐められるわよ。」

「ハハッ。鈴香、考え過ぎ。それより私、お昼 食べてないのよ。急いで 食べちゃおう。」

私は パソコンを閉じて 立ち上がった。

呆れた顔の鈴香に 笑顔を向けて

冷蔵庫から サンドウィッチを取り出す。

「お昼くらい ゆっくり食べてよ、もう。」


鈴香は、膨らんだお腹を そっと撫でながら 私に言った。


まもなく 産休に入る 鈴香の代わりに 

パソコンができるスタッフを 私達は 探していた。


求人サイトから 募集をすると

大学生の男の子からの 応募があった。


「大学3年だから。就職まで 2年近くあるわね。鈴香が 復職するまでの 繋ぎには 丁度いいね。」

「あら。私、復職しないかも しれないじゃない?子供と離れるの、イヤで。」

「怖い事 言わないでよ。」

パンを 牛乳で流し込むと、私は立ち上がった。






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