スパダリの秘密〜私の恋人はどこか抜けている〜
「余裕のない男は嫌われるぞ。彼女、年下なんだろ？　金曜だし羽目くらい外させてやれよ」
「わかってるさ。ただ心配なだけ」
「本当彼女のことになると余裕ないよな。その子にも見せてやりたいわ、お前の本性。わざとかっこ悪い男演じてるとか、疲れねーの？」
「それで彼女の気を引いていられるのなら、どうってことない」

　有紗も慶汰に劣らず才色兼備な上、本人が自覚している以上によくモテる。ともすれば、恋人に対する条件が高くなってしまうのも仕方がない。

　しかしながら、有紗はとにかくプライドが高いため、完璧すぎる男性では逆に彼女自身のプライドがへし折られ、引け目を感じてしまうと踏んだ。

　だから慶汰は演じていた。外では完璧だが、私生活――すなわち恋人の前ではどこか抜けている自分を。そうすれば、有紗は「この人は私がいないとダメね」なんて言って、自分の存在意義を感じると思っていたから。

　もちろん思惑通りで、すべては慶汰の手のひらの上だった。

　有紗と付き合う際、彼女は意外にも押しに弱いと知ったので、私生活がだらしない振りをして半ば強引に半同棲までこじつけた。

　そして有紗が家を引き払い、本格的に同棲を開始するまではあと少し……というところだったのに、ここでまた問題が起きてしまったのだ。

「で、その元彼も一緒に飲んでるんだっけ？　そりゃ心配だよなぁ」
「ああ、それもあるけど……」

　有紗の元彼である、羽鳥大樹がサンフランシスコから帰国した。それだけならまだよかったのだが、慶汰は聞いてしまったのだ。

　社食で有紗と大樹が話していたこと――彼が三年前、有紗に振られた理由に加え、有紗が本当はだらしない男が嫌いであることを。すなわちそれは、自分が振られるかもしれないことを意味していた。

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