俺様社長は純情な田舎娘を溺愛する
結局、翔さんが離してくれたのは第一陣のお客さんがエレベーターで到着してからだった。
「果穂の所から東京まで、ヘリコプターで30分くらいで行けるんだ。
今の俺の密かな夢は今期の売上伸ばして目標達成したら、ヘリコプター買おうと思ってる。」

いたずらっ子の顔をして翔さんが言う。

「えっ⁉︎冗談ですよね?」

「結構、本気。会社の屋上から果穂の実家近くのホテルにヘリポートがあった。そこに降りたら片道35分だ。」
本気で調べたのか正確な時間まで出てきてびっくりする。

「えっ⁉︎いやいや、ダメですよ?
そんな…私的な事で会社動かしたら…副社長さんに怒られちゃいますよ。」

「果穂のうちの近くに店舗を作ればちゃんと仕事の為になる。」

「えっ……。」
規模が大き過ぎて頭がついて行かない…。

「あんな田舎に店舗作っちゃうんですか?」

「あのホテル周辺だったら上手くやったら、結構売上げられると思うよ。
だってそう言う店無いでしょ?海岸通りなんて立地も良さそうだし。」

そんな簡単に店舗って作れるの⁉︎

自分が悩んでいる事なんて、ちっぽけでどうでも良い事なのかもと思うくらい世界が違って見える。

「だからもし果穂にふられたら俺、目標失ってしばらく寝込むかもしれないな…。」
降りのエレベーターで突然そんな事を言い出す。

「えっ…社員の運命まで私は背負えませんよ。」

「ははっ、面白い事言うね。」

「全然、面白く無いですよ…。」

翔さんと話していると、単純にシンプルに心が決まっていく様な感覚がする。
悩んでても仕方がないって思えるくらい前向きになれる。

「翔さんと話してると私が悩んでる事なんて、どうでも良い事みたいに思えてきます。」
気が抜けてふふふっと笑ってしまう。

「そう言う事だ。
考えるより生むが易しって言うだろ。
とりあえず思いついた事を形にすると、そこから失敗も成功も生まれる。立ち止まったらそこで終わりだ。」

「成功者の考え方ですね。さすが社長さんです。」

「若干、馬鹿にしてないか?」

「まさか!!凄く尊敬してるんですよ。リスペクトです。」

「俺は好きになって欲しいんだけど…。」
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