Better late than never〜失った恋だけど、もう一度あなたに恋してもいいですか?〜
* * * *

 芹香が再び目を覚ますと、真っ白な天井らしきものが見えた。部屋の中は温かく、差し込む日差しの明るい様子から、ここが病室であることが窺えた。

 ぼんやりと瞳を動かすと、目の前には心配そうな表情を浮かべた両親の顔があった。

「芹香……!」
「お父さん……お母さん……」
「心配したのよ……良かった……本当に良かった……!」

 泣きじゃくる二人の背後では、兄と誠吾がその様子を見守るかのように静かに立っていた。誠吾の姿が目に入った途端、気を失う前の出来事が夢ではないことを実感する。

「私は誘拐されたの……?」

 ようやく目が覚めて安心したのに、芹香から唐突な質問を受け、両親は明らかに狼狽(うろた)えた。

「い、今はそんなことはいいじゃない。あなたが生きて戻ってきてくれただけで私たちは嬉しいのよ」
「そうだよ。何も考えずにゆっくりと休みなさい」

 それはきっと肯定の意味ね……芹香は悔しさの余り涙が溢れた。

「ごめんなさい……私のせいで……お父さんとお母さんに……それにたくさんの人に迷惑をかけちゃった……本当にごめんなさい……!」
「芹香……! 大丈夫だから、心配しなくていいからね……」
「でも……!」

 そこへ誠吾が近付いてくると芹香と両親は口をつぐみ、彼の方に視線を向ける。誠吾は昔と変わらぬ穏やかな表情を浮かべると、父親の方へと向き直る。

「社長、そろそろよろしいでしょうか?」

 そう言われると、父はハッとしたような顔になり、誠吾に場所を譲るかのように彼の背後にまわる。

「あぁ、そうだったね。申し訳ない。じゃあ芹香、私は仕事に戻るが母さんは外で待っているから」
「えっ……それって……」

 芹香の言葉が終わらないうちに、両親は誠吾に娘を託して病室から出て行ってしまった。どこか不安げな芹香の横に、誠吾は椅子を持ってきて腰を下ろす。

 それから芹香の頭を撫でながら優しく微笑んだ。

「少しだけ事件についての話を聞かせて欲しいんです。芹香さんも疲れているでしょうし、長くはならないようにしますので……構いませんか?」
「……わかりました」
「ありがとう。じゃあまずは君が目を覚ましたことを看護師の方に伝えないと。少し待っていてくださいね」
「……お願いします……」

 誠吾は頷くと、ナースコールを押した。
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