わたしのしあわせ

わたしのしあわせ 16

その後のこうちゃんは恥ずかしかったのか、私に迷惑をかけたと思ったのか、親に知られたら私が居なくなると思ったのか、月に1回来るか来ないかになったの。こうちゃんに会えないのが寂しくて、休日にはあちこち行って露出活動が増えちゃったの。それでも時々は来てくれて、普通の会話とか読書とか、平和に過ごしていたの。

並んで座って映画はあれ以来避けてる、また同じ事になったら止まらなくなりそう。
こうちゃんの初めての相手になると言うのは魅力的だけど、私なんかにそんな資格無いんじゃないかって言う気持ちも有るの。
高校の3年間、変態野郎に汚されきった私が、天使のような、私にとっては天使そのもののこうちゃんの初めての女になるなんて。
この事は私の願望だから、とりあえず置いておこう。

でも、普通の恋愛ってどんなのだろう、出来れば経験したかったな。
あの時、あの公園で泣いてなければ、あんな変態野郎には会わずに済んだのかな。
あの時に告白なんてしなければ、あんな変態野郎には会わずに済んだのかな。
違う人を好きになってれば、あんな変態野郎には会わずに済んだのかな。
今さらそんな事考えても、時間は戻せないよね。
そんな事を考えて救いが無いって事を思い知る度に、こうちゃんに会いたくなる。
こうちゃんも私の事好きみたいだから、余計に・・・
モールでも行って、露出しようかな。

こうちゃんが中3になると受験勉強が始まって、今まで以上に来れなくなったの。もうずっと来てくれてない。LINEでは時々お話してたけど、それも迷惑になるかもしれない。なるべく少なくしようと思って、私から連絡しないように我慢したの。
なんだか気分が落ちる。
露出じゃ足りない。
彼氏でも出来れば違うのかな?
でも、新しい恋愛なんて怖い。
時々こんなふうに気分が落ちる。
時々こうちゃんからLINEが来るのが唯一の救い。
こうちゃんに会いたいな。

休日の土曜日、朝からこうちゃんからLINEが来て「勉強疲れちゃったから、ドライブに連れていってくれないかな?」って。断った方がいいんじゃないかとも思ったけど「いいよ、今日は予定無いから、どっか行こうね」って返したの。急に決まったから近くの水族館に行く事にしたの。
こうちゃんのお母さんにも行き先を知らせて
私「気晴らししたいって言うから、デートしてきますね」
お母さん「最近、勉強頑張ってるから相手してあげてね。ありがとうね」
私「お預かりしますね」

クルマの中で
こうちゃん「ずうずうしい言い方ごめん、最近LINEもくれないから、どうしても会いたくて」
お父さんが、「ちょっと強引な誘い方してみろ」って。
ダメなんじゃ無いかって気持ちも有るけど、それ以上に嬉しかったの。
久しぶりに会えたのも嬉しかった。
また身長が伸びて見えたから
私「身長伸びた?今何センチ?」
こうちゃん「174になったよ」
体つきはすっかり大人になったよ。顔も大人の顔で、お父さん似のイケメンになった。勉強の気分転換に筋トレに励んでたって、腕がずいぶんたくましくなってたよ。

水族館について腕を組んで見てまわったの。入場券はお母さんがお金持たせてくれたって言って、出してくれたの。お母さん、ふしだらな隣人ですみません。
腕を組んでみたら、こうちゃんの腕が前とは別人みたいにたくましくなってたの。
男性としてもとても素敵になってたの。
ドアが有れば開けてくれるし、人混みでは掻き分けて引っ張ってくれるし、いすに座ろうとすれば引いてくれるし。ホントに中学生なの?って位紳士的。
私「今日はじぇんとるまんだね」
こうちゃん「お父さんに言われたんだよ、お前みたいな子供が美佳ちゃんに選んでもらうには、そういう事も出来るようになっとけ」
ビックリしちゃった。
私「お父さんがそんな事言ったの?ホントに?それってお母さんは何か言ってるの?」
こうちゃん「その場にいたよ、うなづきながら」
私「こうちゃんはどう思ってるの?」
こうちゃん「僕もそう思う」
なんだかとても暖かい気持ちになれた。
今日もデニムのミニに白のTバックだったけど、露出なんて考えなかった。
あちこちで見えてたと思うけど、意識してなかったよ。

水族館を出て駐車場に歩きながら、こうちゃんの腕にすがり付いたの。
こんなこといつまで続くかわからないけど、今はこの幸せな時間にすがろう。
私「こうちゃん、ありがとう」
照れくさそうに、笑ってくれたの。
やっぱりこうちゃんは、私の天使だ。またこうちゃんに救われた。
クルマに乗ってから、こうちゃんを引き寄せてキスしたの。
今は溺れたい。
こうちゃんも私の肩を抱いて、それに答えてくれたの。

「愛おしい」って言葉、知ってたけど実感したことなかった。
今のこの気持ちがそうなんだ。
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