僕の特技は秘密です
「一条はあれから彼女は作らねーの??」
「ん~。そーだなぁ。もともと出会い少ない方だし。」

半年ほど前に別れたのだが、1つ年下の大学の後輩と付き合っていた。
学内で菜緒(なお)の落とし物を届けたのがきっかけだった。その後、お礼をしたいと言われ連絡先を交換した。

学食で何回か偶然顔を合わせたので、一緒に昼食を取ったりしているうちに大学以外でも遊ぶ約束をし、告白をされ付き合い始めたのだ。

奈緒はショートボブでいつもボーイッシュな服装をしているのだが、表情や仕草がとても女の子らしくて好きだった。

しかし、例の能力が邪魔をした。

デート先でいろんな情報が頭に流れてくるので、彼女との会話が途切れてしまったり、偶然通った事故現場では車が自分の方に突っ込んでくるのではないかと驚き叫んでしまったりと結構な挙動不審ぶりだった。

本来の口数の少なさもあり、次第に距離が離れてしまっていたのだが、決定的になったのは、橘の買い物に付き合って街に出かけた際に彼女が他の男と腕を組んで楽しそうに歩いているのを見てしまったからだ。
その時、奈緒とはばっちり目が合っていたのがお互い何も言えず、その後も互いに連絡を取ることはなかった。

買い物の後、居酒屋で吞みながら、
「あの子は馬鹿だ。一条はいい男だし、一途にいれば玉の輿だったのによー」
と励ましてくれた。

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