僕の特技は秘密です

暴かれた封印

ホテルに戻ると仕事を終えた沙紀さんはすっかりオフモードになっていた。

「みてー!エステお願いしちゃった~♪お肌プルプル~♪」

相変わらず元気だ。

それから、今日のことを一応報告した。

「そうなんだー!椿ちゃんと再会したのね~!」
沙紀さんはさらにテンションが高くなる。

橘はノートに書き留めた例のわらべ歌の歌詞をひたすら見つめ、唸り続けている。

僕はスマホを手に取りアプリを開くと

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今日は、突然伺ってしまい、
すみませんでした。

つーちゃんに会えて嬉しかったよ。
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と、入力した。
この後に、『また、会いに行っていい?』『次はいつ会える?』と何度も入力と削除を繰り返したが、結局、続く言葉は送れなかった…。

相手は高校生だし、押しが強すぎて嫌われるのが怖かった。

しばらくすると返信を知らせる通知音が鳴ったが、橘姉弟に揶揄われるのが嫌なので、自分の部屋にしているゲストルームへ戻るってからアプリを開いた。

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病院で目が覚めてから、
ずっと、おーすけ君は空想の友達
って言われていたから、
私も会えて嬉しかったです。

お花の模様の鯉、まだ池にいます。
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返信があったことよりも、二人の共通の記憶があることが嬉しすぎて、顔が緩みっぱなしだ…。
そんな自分を見られるのが恥ずかしくて、その日はそのまま寝ることにした。
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