ゲームクリエーターはゲームも恋もクリアする
中に入ると、東堂さんはいきなり立ち止まった。

若葉は、本当に貸し切りだときょろきょろしながら歩いていたので、そのまま東堂さんの背中に突進する形で
ぶつかってしまった。若葉は慌てて、

「た、大変失礼しましたっ!!」

と、頭を下げた。東堂さんは、若葉がぶつかったことには触れず、

「敬語やめない?」

と言った。

「えっ?何かお気に障りましたか?」

と聞くと、

「いや、なんかせっかくのデートなのにデートっぽくないというか。」

「こだわりますね。」

と言うと、

「そりゃそうだよ。気になる人とやっとデート出来るんだから。そうだ!今日はもう仕事の話も
無しで。」

「それは難しいのでは?私たちの唯一の共通項ですし。仕事の話を抜きにすると会話が成立しなくなると思います。」

「いや、大丈夫だよ。今日は仕事の話をしないこと!はい、約束!」

と言って、東堂は若葉の目の前に右手の小指を差し出して来た。

すごい人なのに、無邪気な感じがかわいらしいと若葉は思った。

若葉は、ゆっくりと右手の小指を東堂の小指に絡ませた。すると、東堂は、

「はい、指切り。嘘ついたらお互いの言うことを何でも一つきくこと。」

「え?罰則ひどくないですか?」

と、若葉が言うと、東堂は笑いながら、

「大丈夫だよ。仕事の話をしなければいいだけなんだから。」

と、言いながら、小指をほどくと同時にそのまま若葉の手を東堂の大きな左手で包み込んだ。
そして何事もなかったかのように、若葉の手をつないだまま、歩き出した。

「あ、あの・・・?」

若葉は赤くなりながら言うと、

「嫌だった?」

と、東堂が聞き返した。若葉の正直な気持ちをいえば、嫌悪感はない。むしろ・・・。

若葉は、

「い、いえ。」

と答えると、東堂は、

「今日はデートだからね。」

と、うれしそうに言うと、再び歩き出した。
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