ゲームクリエーターはゲームも恋もクリアする

お見合い

お見合い当日

若葉は始発の新幹線に乗り込み、旅館のある実家へ向かった。

ブブブブ!

新幹線に乗っていると、経営コンサルタントの友人から着信が。

若葉は席を立ち、新幹線の連結に移動してから電話に出た。
ガタゴトと小刻みな揺れの中、聞き漏らさないよう携帯を耳に強く当てた。

「もしもし若葉?よかった、繫がって。あの後気になってたこと調べたんだけど…。」

「気になってたこと?」

「うん、!そもそもあの場所にホテルを建てること自体、ほとんどメリットがないのよ。しかも、駅前のホテルなのにわざわざ温泉まで掘ってるし。その上、採算度外視の宿泊料金。1度価格を下げるとよほどの事がない限り、値上げなんて出来ないのよ。お客は1度安い価格で泊まってしまうと次からはその料金でしか泊まりたくなくなるからね。あのホテル、若葉んちの旅館潰す為に建てたとしか考えられない。」

「まさか…そんな…。」

「買収の方が明らかに安く済むし、時間も労力もかからないのに、わざわざ採算の合わないホテルまで建設して、融資の話を
持ちかけるなんて。かなりの時間もお金もかけてる。そこまでするメリットが私達には分からない…。何か裏があるかも…いずれにしても、有野ホテルグループは怪しいから、融資の話はすぐ返事をせずにできるだけ引き延ばして。こっちでも引き続き
調べてみるから。」

「はるか、本当にありがとう。」

と、礼を言ってから電話を切った。
若葉は座席に戻り、考えた。
裏…確かに私かお姉ちゃんと結婚するためにそこまでするのはおかしな話だわ。他に理由があるとすれば一体なに?

若葉は新幹線が駅に着くまで必死に考えを巡らせたが、納得のいく答えは見出せなかった。

若葉は駅に降り立つと、

「準備が必要ね・・・」

とぽつりとつぶやき、時計を確認した。
< 64 / 128 >

この作品をシェア

pagetop