ゲームクリエーターはゲームも恋もクリアする
実家の旅館は、高台の上にあるため、10分ほど車で下って行くと、
駅前の有野グループのホテルに到着した。

車がホテルの正面玄関に着くと、すぐに一人のベルボーイがドアを開けてくれた。

若葉は軽く礼を言って降りると、眼鏡でスーツ姿の一人の男性が近づいて来た。

「私、有野の秘書をしております、木下と申します。本日は、ご足労頂き誠にありがとうございます。
では、今から有野の部屋へご案内いたします。」

と言った。
友人の忠告を聞いたばかりの若葉は警戒心MAXだった。若葉は歩き出した木下を止めた。

「あの!部屋ってどういうことですか?」

「ああ。説明不足で申し訳ございません。有野は当ホテルの特別室で仕事兼生活をしておりますので、
本日はそちらのお部屋にご案内するよう言われておりまして。」

と、木下は言った。
若葉は有野の本当の目的を知るきっかけとして、一か八か勝負に出ることにした。
私とのお見合いに何の意味があるのかを知りたかったからだ。
旅館を狙うなら、お見合いなんて口実に過ぎないだろう。私がここで拒否しても
引き止められることはないはず。
でも、お見合いに意味があるとすれば、私がわがままを言っても応じるはず・・・。

「すいません。さすがに、初対面の方のお部屋に入るのは・・・。」

「ごもっともなご意見です。ですが、社長がお見合いしているところをホテルご利用のお客様に
見られてしまうのも困りますので。」

「では、また日を改めていただけますか?うちの旅館でお見合いするのはいかがでしょう。」

と、若葉は笑顔で提案した。すると木下は明らかに渋い顔をしてから、

「分かりました。有野に確認してみます。ロビーでお待ちください。」

と言ってから木下は、若葉には電話の声が聞こえないところまで移動し、社長に連絡を取っていた。

若葉は言われるまま、ロビーに置かれているソファーに座った。
10分ほど待たされたあと、再び木下が若葉の元へやってきた。

「お待たせ致しました。中華レストランの個室がご用意出来ましたので、そちらにご案内
させていただきます。」

「はい。」

と若葉は返事をすると、木下の後ろについて、中華レストランに向かった。
< 66 / 128 >

この作品をシェア

pagetop