ゲームクリエーターはゲームも恋もクリアする
若葉がお手洗いから戻ってきて席に座ると、

「若葉さん、ここの中華はとても美味しいんですよ。ぜひ召し上がってください。」

と、有野社長が言った。すると、店員が次々と豪華な中華料理を円卓に並べ始めた。

「すいません、せっかくですが、今日は食欲がなくて。」

「それはいけませんね、そういう時こそ少しでも胃に入れた方がいいですよ。ささ、
遠慮せずにどうぞ。」

「はあ・・・。」

と、若葉は返事をしたが、帯がきつくて本当に全く食べる気がおきず、やはり箸をつける気にはならなかった。

有野社長はおかまいなしに、ガツガツと食べ始めた。

「あの、私、本当に今日はお断りに来たただけなので。」

有野社長は手を止めると、

「若葉さんが断ったら、この話、お姉さんに行くだけだよ。」

「何をバカなことを!姉は結婚してます!お腹にも赤ちゃんが!」

「それは好都合です。跡継ぎが欲しかったのでね。」

それを聞いて若葉はあきれた表情をした。

「姉が離婚してあなたと結婚するわけないでしょう!」

「そればっかりはお姉さんが判断することですからね。」

「ばかばかしくて話になりません。とりあえず、私たちに関わらないでください!失礼します!」

と言い放つと若葉は席を立った。

「若葉さん、気が変わったら来週の同じ時間に私の部屋に来なさい。」

と、有野社長が若葉の背中に向けて言った。

若葉が個室を出ると、慌てて木下が若葉を見送りに行こうとしたが、
有野社長が止めた。

「見送らんでいい。」

「はい。なかなか気の強いお嬢さんでしたね。」

「ああ、瑞葉さんそっくりだ。構わんよ。気性の激しい子ネコほど、なついた時の
喜びは倍増するからな。」

と、有野社長はニヤリとしながら言った。
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