ゲームクリエーターはゲームも恋もクリアする

母の真実


「ごめんね、全部話すわ。」

母はそう言って立ち上がると、ふすまを開けて、付近に誰もいないか確認した。
そしてふすまを閉めてからもう一度座ると、穏やかな口調で話し始めた。

「有野君はこの町の地主の一人息子でね。母さんはこの旅館の一人娘で、
同じ年で、お互い家を継ぐっていう環境も同じで、小さい頃から仲がよくて。
母さんは婿養子を取って旅館を継ぐって思ってたから、有野さんのことは恋愛対象ではなかったの。
でも、有野さんの方はそうじゃなかったの。
高校の卒業式の日に、4年後に迎えに行くから結婚しようって言われて。
もちろんもともとそういう感情はなかったからお断りしたの。でも、絶対にあきらめないって言われて。
今思えば母さんの断り方がいけなかったの。私は婿養子をもらって旅館を継ぐから有野君とは結婚
出来ないって言ったから。あの時、有野君のことは友達としか見れないって言っておけば・・・こんなことには。
それから高校卒業と同時に母さんは旅館の仲居として働き始めて。有野さんは東京の大学に進学したの。
母さんが働き始めてからすぐに、お父さんと出会ったの。お父さんは板前の修業でこの旅館に住み込みで
入ってね。母さんが20歳の頃にお父さんとの結婚が決まってね。その一年後に和葉が生まれて。
有野君が大学を卒業して地元に戻って来たときに、偶然駅前で和葉を連れて歩いてるところに、
有野君に声を掛けられてね。今幸せですか?と聞かれて。もちろんこの上なく幸せです。って
答えたんだけど、有野君は私が旅館のために好きでもない人と結婚させられたと誤解したみたいで。
必ず僕があなたを幸せにするから待っててくださいと一方的に言われて。」

「はあ?何それ?」

「私がお父さんに一目惚れして猛アタックして結婚したんだけど、有野君はそんな
事情知らないから。私を救い出さないとと思ったのかもね。」

「勝手なやつ!やっぱりこのボイスレコーダー警察に提出しよう!」

と、和葉が意気込む。

「それはダメよ。もういいのよ。お見合いはちゃんとお断りしたんでしょ。
旅館と裏の山も売れば、蓄えはなくなるけど、借金は残らないし、
生きていけるわよ。」

と、母は悲しそうな目をして笑った。

「さ、この話はもう終わり!忘れてちょうだい。若葉は
明日の朝、東京に戻るのよね。」

「うん。」

「だったら早く寝なさい。和葉もお腹の赤ちゃんのこと考えて
早く寝るのよ。」

と言うと、母はパタパタと部屋を出て行った。
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