恋の♡魔法のチョコレート
「……はぁ」

出直しだ、作戦練り直し。

今日はもうダメだと思うから…

「超追い出されてるじゃーんっ」

改めてパンパンッとスカートをはたいてリュックを背負い直そうとすると後ろから声が聞こえた。

え、今の私に言ってるんだよね…?

ゆっくり振り返った。

あんまりいい気はしなかったから、恐る恐るゆっくりと。

「あ、こっち見た!」

「!」

「やっぴーーーーー!」

青!めっちゃ青っ!!!

びっくりして目が飛び出るかと思った。

目元で両手ピースをしながらご機嫌に微笑む小柄な男の子。

知ってる、話したことはないけどこの風貌知ってる。

可愛いお顔をより引き立てるような空色の髪色をした…

えっと、名前何だっけ!?

確か小鳩と同じクラスの…っ

「そらぴょんだよ」

「え?」

笹原宙(ささはらそら)!そらぴょんって呼んでね!」

「そ、そらぴょん…?」

なんてコミュニケーション能力の高さ、一言目であだ名を呼ばせて来るなんて。

自慢の空色ヘアーをなびかせながら私に近付いてきた。

「キミも入部希望者?」

少しかがんで私の顔を覗き込むように、上目遣いが使い慣れてるぐらい上手かった。

「でもなかなか入れてくれないよねぇ」

ふふっと笑って、私の瞳をがっちり掴むように視線を合わせる。

「キミもチョコレート好きなの?」

「え…」

「だからチョコ研入りたいの?」

「いや…」

え、何…何なの?
一体何が言いたいの?

てゆーか…っ

「近いんだけど!」

ドンッと両手で体を押した。

小柄なそ…っ、そらぴょんは軽く突き飛ばされていった。

あ、やばっ!思いっきりやりすぎたかも!

「ごめ…っ」

「部活中なんで他でやってもらえますかっ!!」

ガラッとドアを開ける大きな音と共に小鳩の大声が響く。
家庭科室の前の廊下でやってたら全部聞こえてるに決まってる、だいぶ怒ってる。

「迷惑です」

今のは廊下ではなく、私の心に響いた。

また小鳩によくない印象与えてしまった。

「ごめんね、ゆいぴー!俺らもう行くね!行こっ」

「えっ」

なぜか腕を掴まれて、走るそらぴょんに連れられ私も走る。
強引に引っ張られた腕は職員室を通り過ぎてもそのまま止まることを知らなくて…

え、これどこまで行くの!?

何で私も走らされてるの!?
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