恋の♡魔法のチョコレート
「お、おはよう!」

若干甘噛みで入って来たのは森中部長だった。

森中部長と言えば、昨日もいつも通り連絡事項だけ伝えたら帰っちゃって。

基本作るより経営的なポジションだから、チョコ研伝統行事でもスタンス変わらないんだねってそらぴょんと2人でチョコレート作ってた。

そらぴょんは少しだけ寂しそうだったけど、もしかして市販のでもらえるかもしれないし!って無駄にポジティブ発揮してた。

「小夜さーん、おはようございます~!」

いつもみたいに挨拶するも、すぐに手に持ってる物の存在を思い出してあたふたしちゃって。

「あっ、ちょっと待ってくださいね!今、今ラッピングするんでっ」

1回置くべきか鞄から包装袋出すべきか1人てんやわんやしてるそのそらぴょんの前で森中部長はもじもじしながら恥じらって、なんだからしくない。

「あの、笹原くんっ」

「はい!あ、待ってください!すぐ、すぐ用意するんで!」

そらぴょんの予定では朝準備して午後渡すつもりだったからだいぶ時間狂っちゃって、とりあえず台の上にチョコレートを乗せることにしたらしい。

「これねっ」

「あと1分!あ、30秒でも!」

「作って来たの…!」

「……………………え?」

間!

長ッ!

間!!

さすがにこの間に冷蔵庫1回閉めた。

そらぴょんの前に差し出されたのは雲が浮かんだ空柄の巾着型の包装袋、渡す手が震えてる。

「あの、初めて作ったから…美味しいかはわかんないんだけど、私も作ってみたくて、笹原くん…マドレーヌ好きって言ってたから!」

「…俺にくれるんですか?」

「うん!恥ずかしくて、昨日一緒には作れなかったんだけど…あ、でも本当味はわかんないよ!一応レシピ通りやったつもりだけど、小鳩くんみたいにはできないし全然っ」

「めっちゃおいしいです!!」

震えてた森中部長の手を両手で掴んだ。

「絶対おいしいです!」

見つめ合って、いい雰囲気で、しまった私完全に出ていくタイミングを失った。

でも笑い合ってさ、なんかいいなって

…思ったんだよね。

私も渡せたらいいな。

ちゃんと、向き合って。

せっかくがんばって作ったんだもん、チョコレート。
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