恋の♡魔法のチョコレート
「あれ、詩乃ちゃん指どうしたの?」

「あ…っ」

しまった、ずっとバレないようにしてたのに。

気付かれないように左手の人差し指を隠しながらクッキーを作っていた。

もう絆創膏はしてなかったけど、ちょっとだけ跡になっちゃってた小鳩と練習した時に出来た火傷の傷。

「えっと、これは…」

あぁーーー…

気付かれたくなかった!

お菓子作りが得意な女子を演じたかったのに、実は練習してた上にベタに火傷してるとか!

ずっと見られないようにしてたのに!!

「…!」

そっとオージ先輩が指に触れた。

その瞬間、血液が一気に流れ出したみたいに指先から熱がぶわっと広がった。

「もしかしてすげぇ準備してくれた?」

「……っ」

じーっと私の目を見てる。

やばい、持たない。

心臓が持たない。

ダラダラと変な汗流れて来ちゃう。

「そ、そんなことっ」

「そう?詩乃ちゃん一生懸命教えてくれたけど、めちゃくちゃ先生みたいだったから」

めっちゃ見透かされてるじゃん。

工程覚えるのに必死ですごい作業的だったの伝わってるじゃん。

恥ずかしい!!!

「詩乃ちゃん、実はお菓子作るの苦手だったりしない?」

「え…っ」

「あ、やっぱり?」

全面的に表情に出てしまう私の顔を今すごく殴りたい。小鳩と違って慣れない手つきでわかっちゃったんだろうけど、演じてた自分込みですっごい恥ずかしい。

「詩乃ちゃんめっちゃ可愛いじゃん~!」

ケラケラと笑ってる。

何も言わなくても全部バレてしまった。

もう最悪~!!!

もっと自然な振る舞いもシミュレーションしてくるんだった!

てゆーか可愛いのはオージ先輩の方ですよ、そんな楽しそうな顔で笑わないでくださいっ

だって私は恥かいただけで何も可愛く…っ

きゅっと私の人差し指を握った。

「ありがと、俺のためにがんばってくれたんだよね」

もう全然痛くないはずの薬指がジンジンと脈を打つ。

オージ先輩の指が私の指に触れてるだけなのに。

胸がいっぱいになる。
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