恋の♡魔法のチョコレート
「それでね、オージ先輩がね、詩乃ちゃん可愛いって!可愛いって、言ったの!可愛いって!」

「よかったねメリー!」

「クッキーも上手に出来たし、そのあとLINEも教えてもらえちゃったの…!」

「メリーテンション最高潮じゃん!」

絶好調に昨日から楽しかった。

早く聞いてほしくて部活に行くそらぴょんをとっ捕まえてすぐ話しちゃうぐらいに。

私の感情に合わせて同じようにテンションを上げてくれるそらぴょんはキャッキャしながら話を聞いてくれた。
今日はその空色ヘアも気分を上げてくれてるみたいだった。

「いいな~、メリー!もう超いい感じじゃん!」

「そんなことはないけど、ちょっと認識されたぐらいだし!」

「認識は意識の始まりだよ!」

「え、何それ!めっちゃいい言葉!」

「俺もなぁ、もっと喋れたら…」

はぁっと息を吐きながら、あっという間に着いてしまった家庭科室のドアをそらぴょんが開けた。

くすくすと笑ってる森中部長の声が廊下まで響いた。

さっきまで大きな声で喋ってたそらぴょんが急に大人しくなって、まるで顔を作り替えたみたいにおしとやかに笑って…たと思う。

いつもならそんなそらぴょんのことを、さっきみたいにすればいいのにーって見てたんだけど…


パッと私の目に飛び込んできたのは楽しそうに笑ってた小鳩だったから。


今までも何回か、数えるほどだけど、小鳩のそんな顔は見たことがあった。


なのに、どうしてかな。


そんな顔、するんだね…




森中部長の前で。




「やっぱり小鳩くんの作るチョコレートは美味しいよね、1番好きかも」

「ありがとうございます」

私にはくれなかったのに、森中先輩にはあげるんだ。

あ、そーゆうルールだっけ?

作ったものは全部、部長にあげるって。

そう決まってるんだよね。


それって誰が決めたの?


森中部長が決めたの?


小鳩が決めたの?


みんなの前でもそうすればいいのにって思ってた。

みんなにも見てもらいたいって思ってた。


できるんだ。


私だけじゃないんだね、そんな顔を知ってるの。


私の前以外でも小鳩は笑うんだ。


それとも、森中先輩以外の前で笑っただけなのかな?



もしかして小鳩ってー…



ふとしたことが気になって、もう一度小鳩の方を見た。

視線が気になったのか私と目を合わせた。


なのに、逸らしちゃった。


なんか逸らしたくなって…


昨日からずっと楽しかったのに。

オージ先輩のことばっか考えて楽しかったはずなのに。

どうしてかな、急に楽しくない。


なんでこんな胸が痛くなるの?


あんなにいっぱいで満たされていたのに。
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