恋の♡魔法のチョコレート
小鳩の正面に回り向き合うように調理実習台を囲んだら、森中部長が用意してくれた可愛らしい小さな箱にチョコレートを詰めていく。

4つに別れた小部屋に、りんご、パイナップル、いちご、ぶどうの形をしたチョコレートを1つずつ入れ蓋をしてパステルカラーのリボンをかけたら出来上がり。

「これ全部で何箱あるの?」

「50箱ですね、それぞれ50個ずつ作ったので」

「ご、50個…!?」

そんなに1人でチョコレートを作った小鳩はすごい。

でもそんなことより50箱ってことは50人しか買えないってことじゃん!

絶対争奪戦だよ、朝イチ来ないと買えないじゃん!!

よりによって基本仕事がないクラスの模擬店当番が朝ちょっと入ってる…!

「すぐ売れちゃうんだろうね、魔法のチョコレート…」

ぐすんっとしょんぼりしちゃう、やっと手に入ると思ったのに。

「………。」

「あ、わかってるよ!何の効果もないチョコレートをどんだけ欲しがるんだって!」

「…まだ何も言ってません」

オージ先輩に告白したいから。

勇気が欲しいから。

背中を少しでも押してもらえたら。

そんな思いで欲しかった魔法のチョコレート。

「でもこんなに可愛かったらそんなの関係なく欲しいよね」

小鳩が一生懸命作ったチョコレート、欲しくないわけない。

チョコレートを作るのが大好きな小鳩が作ったんだ。

どれだけ気持ちが込められてるかもう十分知っている。

「柳澤さん」

「ん?」

「先日、お菓子の作り方を教えたら何でも聞いてくれるって言いましたよね?」

「うん、言った!何か私に聞いてほしいことあった?」

50個も箱に詰めるのは思ったより大変で、きっと秒で売れちゃうのに裏の苦労は伝わらないんだろうなとか考えていた。でも小鳩はそんな作業もきっと好きなんだろうなって思いながら。

「お願いがあります」

「いいよ!何でも聞くよ!」

手を止めて箱を置いた小鳩が調理実習台の引き出しから別の箱を取り出した。

シックなデザインに赤色のリボンがかけられた今用意してるものとは比べものにならないほど、想いに明らかな重さがあった。

「これ、もらってもらえませんか?」
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