愛されることに 慣れていなくて

★ 抑えられない感情

リビングのドアを開けると、てっきり寝ていると思っていた彼女が「お帰りなさい」と迎えてくれた。

「起きてたのか?」

「はい、眠れなくて」

「何かあったのか?」

「はい、ありました」

「え⁉︎ 何があった」

不安がよぎる。まさか赤森か!

「私…」

「どうした?誰かに何かされたか?アイツか?アイツが来たのか⁉︎」

「アイツ?、あ、はい、来ました」

「なんだと!何をされた⁉︎ 大丈夫か⁉︎」

眠れないと言った彼女、何かされたに違いない。
早水さんによれば、やはりベリーは赤森に会いに行き、今は一緒に暮らしているとのことだった。なのに何故だ。

俺は後悔した。やはりもっとアイツの行動を注視しておけばよかったと。

「あ、あの、隼人さん」

「何だ」

「お金を、お金を返しに来てくれました」

「お金?」

「貸していたお金を返しに来てくれたんです」

「え?」

「仕事が終わって幼稚園を出てすぐに、私の目の前に現れました。驚きよりも怖かった」

「そりゃそうだ、当たり前だ!」

「でも、違うんです」

「違う?」

「謝られました。お金を返してくれたあと、怖い思いをさせてごめん、もう私の前には現れないからって」

「そうなのか?」

「はい」

「そうか…そうだったのか…」

俺は安堵した。
赤森は父親として生きていく覚悟を決めたのだろう。
さすが早水さんだと思った。

「それで…」

「ん?」

「それで…」

「どうした?」

「私…」

彼女が俺の顔を見上げた。

「私、あの人が目の前に現れた時、すごく怖かった。怖くて怖くて身体が硬直しました。その時私…」

「ん?」

「必死に叫んでたんです。心の中で、隼人さん、助けて、お願い私のところに来てって」

「菜々子…」

「私、あなたのこと、好きになりました。この歳で何言ってんだって、自分でも思うけど、隼人さんのこと」

俺は彼女の言葉を最後まで聞くことが出来なかった。俺のことを好きになった。彼女の口から流れ出た時、感情を抑えることができなくなり、激しく彼女の唇を奪っていた。
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