愛されることに 慣れていなくて
「菜々子、ごめんな」

彼の手が優しく私の髪を撫でる。

「どうして…」

「ん?」

「どうしてそんなに優しくするの」

「日向菜々子だからだ」

「出会った頃もそうやって言ってた。何を聞いても日向菜々子だからだって、どうして、どうしてですか」

「菜々子を愛しているからだ。俺には菜々子しかいない」

「もう、嘘はいいです」

「嘘?」

「結婚するんですよね。貴方に相応しい許嫁と。どうしてそんな人がいるのに、愛してるなんていうんですか」

「ちょっと待ってくれ菜々子。許嫁?なんの話だ?」

「お父様が仰っていましたよ。許嫁がいるって」

「あのクソ親父!」

「菜々子、俺には許嫁なんかいない。俺には君しかいない。今も昔も、君しかいないんだ」

「昔も?」

「とにかく、クソ親父の言ったことは忘れろ。全部忘れろ」

「警察沙汰ってなんですか?」

「警察沙汰?」

「警察沙汰になった人物と関係があった私と一緒にできないって。それって真太郎の事ですよね。真太郎が何かしたんですか?」

「警察沙汰になったのは君に出会う前の話だ」

「どうして?隼人さんはどうしてそこまで知ってるんですか?」

「調べたんだ。奴のことを調べた」

「やっぱり、お父様のいうことは正しかったんですね」

「違う!」

穏やかだった彼の口調が突然激しくなった。
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