愛されることに 慣れていなくて
螺旋階段を上り奥の部屋に案内された。

「まずはお着替えからです。女性スタッフが対応いたします」どうぞお入りくださいと、ドアを引いてくれた。

中に入ると、目の前にある真っ白の壁には、ワインレッドのベルベットカクテルドレスが掛けられていた。オフショルダーで膝丈ほどのフレア。

一瞬にして目を奪われた。

「これを着るんですか?」

「はい、お着替えを始めましょうか」


ドレス用のインナーに着替え、恐る恐る袖を通した。

「まぁ、とてもお似合いです」

大鏡の前にいる自分に照れてしまう。

「こんなに肩の開いたドレスなんて着たことないから、とょっと恥ずかしいです」

「とっても素敵ですよ。本当に素敵です」

「ありがとうございます」



部屋から出ると「こちらへどうぞ」と、店長さんが大きな楕円形の鏡の前に置かれた椅子に案内してくれた。そのシンプルだけれどお洒落さを醸し出している椅子に「失礼します」と腰掛ける。

「ドレス、よく似合っていらっしゃいますね」

「ありがとうございます」

「では、髪をセットさせていただきます」

「お願いします」


鏡に映る店長さんの手は、流れるように私の髪に大きめのロットを巻いていき、ハーフアップのスタイルに仕上げてくれた。鏡で後ろを見せてもらうと、上部分は編み込まれ、下部分は緩やかな優しい感じのウェーブになっていた。

自分では一生かかっても絶対にできないであろうメイクも施してくれた。

一連の動作がしなやかで、芸術を見ているようだった。


改めて鏡に映る自分を見つめる。

「これが私…」

一時間前とは全くの別人がそこにはいた。





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