愛されることに 慣れていなくて
彼はフッと笑い、厳しい眼差しを私に向けた。

「じゃあ俺も訊くが、何故見ず知らずの俺について来た?俺が何者かもわからないのに、何故ついて来た?警戒心がなさすぎる!」

「すみません…」

37を過ぎた独身女が若い御曹司に叱られている。本当に私は何をやっているのだろう……


「日向菜々子(ひむかななこ)だからかな」

彼が唐突に言った。

「え?」

「日向菜々子だからだ」

「あのぉ、確かに私は日向菜々子ですが、ちょっと意味がわかりません」

「だよな」

彼はまたフッと笑った。


「まぁ、とにかく住め。俺はしばらく実家に帰らなければならない。その間でもここに住め。それとも何か?アパートに戻って、あの男に殴られるんじゃないかと怯えて過ごすか?」

私は言葉に詰まった。真太郎の荷物はまだ置きっぱなしだろうから、きっと取りに来るはずだ。もう二度と会いたくはない。
それに、一般庶民の私が高級マンションに住めるなんて、この先一生ないだろう。経緯はどうであれ、少しの間でも生活できるということは、とても幸せなことではないだろうか。

彼が実家に帰っている間は甘えさせてもらい、その間に引越し先を見つけよう。
うん、そうしよう。
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