愛されることに 慣れていなくて
私が言葉を失っていると、リビングのドアが開き、御曹司が現れた。

「もう、ここに住めるだろ?」

「あ、あのぅ、これは何なのですか?」

「何って、日向菜々子の部屋の物を移動させたんだ。運ばせると言っただろう。それに、住み慣れた部屋が落ち着くと言っていたじゃないか」

確かに言った。住み慣れた部屋が落ち着くと確かに言った。
『荷物を移動させる』聞いた。確かに聞いた。
けれど、この短時間でまるごと移動させるなんてことは想像もしていてない。

「まだ不満か?」

「不満とかではなく、驚いています」

「不満ではないんだな」

「はい」

「そうか」

私はその時見逃さなかった。彼の厳しい表情がフッと柔らかい表情に変化したことを。
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