謎多き旦那様の嘘、または秘密

旦那様の手が頬を滑る。涙を拭ってくれていた。

私は自分で近くのティッシュを取る。

「もう一つある」

そうだ、それを聞かねばならない。

私は目元を拭って顔を見上げる。

旦那様は真っ直ぐ私を見ていた。

いつもこうして見てくれていたのかもしれない。

「僕と君は、夫婦ではない」

息の次に止まるのは、心臓だった。

「僕たちは赤の他人だ」

言われても、違和感は無かった。
それでも、その可能性を見ないふりをしていた。

目を逸らしていた、ずっと。


< 30 / 42 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop