謎多き旦那様の嘘、または秘密

その言葉に息が止まりそうになる。

窓ガラス。
破片が沢山散らばって。
血と、痛みと。

私はどこにも行こうとなんてしていなかった。

「僕はちょうど君が飛び降りてきたところへ着いた。ガラスの割れる音と、人が落ちる音に家の裏へ回ると君がいた」

どこにも行けなかったから、飛び降りたのだ。

「君は頭を強く打っていて全身血だらけで、足の骨が折れていた」

それを聞いて、やっぱりなと思う自分はいた。

私は私に執着が無かった。
何も思い出せなくて良いとすら、思っていた。

私は、私を捨ててしまったのだ、その時。

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