婚約破棄されたい公爵令息の心の声は、とても優しい人でした
(俺が子供のふりをやめてから、レイナの様子がおかしくなってしまったからな……。目も合わせてくれないし、元気も無さそうだったし)

 そ……それは確かにそうだけど……それはヴィンセント様があまりにも恰好良くなってしまったから、ただ恥ずかしかっただけで……。

(あんな俺の姿はレイナの好みじゃなかったのだろう)

 いや……待って。めちゃくちゃ好みでした。どストライクすぎて今日はお化粧張り切っちゃうくらいに。

(今日もなんだか顔色が悪いし)

 やかましいわ! 日に焼けた肌が恥ずかしくておしろい沢山ふっちゃったのよ!

(どうやらレイナは子供の俺の方が好きらしいからな。やはりショタ専なのだろう)

 ショタ専じゃないわあああああ!!!!

(だからこれからは婚約破棄されない為に、残りの半年間は子供のふりをする事にしよう)

 …………どうやら、彼の心の声が聞こえない間にとんでもない結論に達していたようだ。

「公爵様からご伝言があります。『非常に面倒くさい息子で本当に申し訳ない』との事でした」
「……はぁ……」

 ……やはり公爵様は気付いているのだろう。ヴィンセント様がわざと子供のふりをしている事を。
 
「あ! ちょうちょだ!」

 その声と共にヴィンセント様は上空をひらひらと舞う蝶を追いかけ始め、

「あ……!」
 
 案の定、わざとらしく躓くとドッシャァァァァ!!と顔を地面に擦り付ける様にヘッドスライディングを披露した。

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