あの夜は、弱っていたから
「…じゃあ、元カノになんなければ納得して、俺に慰められるんだな?」

「いや、だから、無理でしょ?淳史、いつもコロコロ彼女変わってるし」

そう言うと、淳史は、私のおでこに思いっきりデコピンした。

「いっ…たあ」

デコピンしたいのは、私の方よ。

と思いながら、淳史を睨む。

「いいか、一回しか言わねえからな」

えっ…


そう言って、今度は優しく私を抱きしめた淳史。

耳元に顔を近づけると、











「涼、俺の最後の女になれよ」











えっ…

「な、な、何で?」

思いもよらない言葉に、私の頭の中が混乱する。

「無、無理だよ。淳史が私を嫌いになったら意味ないじゃない」

今までの行ないから、イマイチ信用しきれない。

「はあ…説得すんの面倒くせ」

め、面倒臭いって…。

「おい、先にマスターのとこ行って待ってろ。帰んなよ」

「えっ、淳史は?」

「15分くらいしたら店行くから。待ってろよ」

そう念を押して、暗闇の中の道を歩いて行った。

本当に、言ってることが強引すぎて、感動も何もない。

何よ

〝最後の女〟って。

嬉しいはずなのに、喜びきれないのは、そうなる保証がどこにもないから。





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