課長に恋するまで
「一瀬ちゃん、社食でお弁当食べてくるんじゃなかったの?」

 お弁当を持って休憩室に行くと鈴木さんに言われた。

 鈴木さんは六才年上で、入社十年のベテランで、結婚してて、五才になるお子さんがいるお姉さん的存在だ。
 色白で、少しぽっちゃりしてて、それが親しみがあって可愛いらしい人だ。

 仕事は全部鈴木さんに教えてもらった。
 お弁当の時はいつも鈴木さんと休憩室で食べている。

 今日だって鈴木さんとお昼を一緒に取る予定だった。

「鈴木さん」

 鈴木さんの穏やかな顔を見たら、恥ずかしさとか、落胆した気持ちとかが込み上がってくる。

「課長の前で石上とやってしまいました」

 鈴木さんが眉毛を上げてありゃりゃという顔をする。 

「いつものやっちゃったんだ」

 鈴木さんが可笑しそうに言った。

「でも、一日一回は石上君と言い合ってるんだから、遅かれ早かれ目撃されてたよ。いいんじゃないの。初日からわかってもらった方が」
「まあ、それはそうなんですけど」
「どうしたの?他に何かあった?」

 鈴木さんが心配そうに聞いてくれた。
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