課長に恋するまで
「間宮はまだ入社して半年ですから、よくわかってない所があります」

「ベテランの鈴木さんは?」

「保育園のお迎えがあるから頼めません」

「他の方にもいろいろと理由があって頼みづらいという事ですか」

「そうです。みんな自分の仕事で手いっぱいですから、申し訳ないです」

「それは一瀬君もでしょ?」

「そうですけど」

「君の言いたい事はよくわかりました」

「私、いけなかったんですか?」

「良かったと思いますよ。ただ一瀬君が、わりと残業が多いみたいなので気になっただけです。相談できず、抱え込むタイプなのかと思いまして」

「心配してくれたんですか?」

「それが仕事ですから」

 前の課長と本当に全然違う。こんな風に心配してくれる事はなかった。

 課長って、いい人かも。

「それからもう一つ気になっている事があるのですが」

「何でしょう?」

「ワイシャツの襟、よれよれですよ。昨日もそうでした」

 うわっ、この人、よく見ている。
 前の課長だったらそこまで見てない。

 やっぱり苦手。

「社会人として身だしなみは気をつけて下さい」
「……すみません」

 悔しい。ごもっとも過ぎて返す言葉もない。

 まあ、私が悪いんだけど。
 でも、かなり凹んだ。
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